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米国逆イールド環境下の投資戦略

米国逆イールド環境下の投資戦略
米国景気は内需を中心に力強く、超過需要によって引き起こされたサプライチェーン(供給網)問題は十分改善していません。事実上の「完全雇用」状態で賃金上昇が進み、FRBはインフレに対応した金融引き締めへと姿勢を強めています。5月のFOMCではQT(量的引き締め)と利上げの加速が発表され、政策金利は年内に2.5%程度とされる中立金利まで引き上げられるとみられます。景気や株価を見る上では、中立金利を超える場合の景気引き締め度合いと、インフレの沈静化が重要になりますが、現時点でその答えは定まっていません。国債利回りの逆イールド(長短金利差の逆転)が一部の年限で発生するなど、市場も測りかねているようです。

景気後退のシグナル「逆イールド」発生するも、米景気は強く、株式市場にマイナスではない。2023年春から秋ごろまで上昇相場は続く

●景気後退のシグナルとされる「逆イールド」が発生 先週の火曜日(3月29日)米国逆イールド環境下の投資戦略 の米債券市場で2年物の国債利回りが一時、10年債を上回る「逆イールド」が発生。2019年の夏以来、約2年半ぶりに出現した。一般的に逆イールドの出現は「景気後退のシグナル」とされており、米連邦準備理事会(FRB)が今後金融引き締めに動くことで景気が冷え込むという展開を投資家が早くも織り込む動きをみせていると言われる。 逆イールドを測定する最もポピュラーな指標が2年債と10年債との長短金利差だ。通常、債券の利回りは年限が長くなるほど返済リスクを踏まえて金利は高くなる。将来の経済や物価が不確実で見通せない分、高めの利回りが求められるからだ。なので、通常は1年債よりも3年債、3年債よりも10年債、10年債よりも20年債の方が利回りは高くなる。 ●金融正常化に向け短期金利は上昇する一方、景気不透明感で長期金利は上昇しにくい ただし、短期金利は足元の金利動向の影響を受けやすく、長期金利は長期的な景気見通しの影響を受けやすい。現在の債券市場では、FRBによる金融正常化の動きで足元の金利が上がっているため短期金利は上昇しやすく、一方の長期金利はウクライナ情勢や商品価格市場の高騰などがもたらす不透明感により景気見通しに自信が持てず金利が上がりにくい。 実際、パウエルFRB議長は次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される5月に0.5%の大幅利上げに踏み切る可能性を示唆したことで、政策金利の動向に敏感な2年債利回りの上昇に弾みが付いており、3月に入ってから1.0%程度上昇した。一方、米長期金利の指標になる10年債利回りは3月に0.6%程度上がったが相対的に上昇幅は限定的だ。 そうした結果、3月29日(火)に2年債の利回りが2.39%あたりで10年債の利回りをやや上回り、さらに4月1日(金)には2年債が2.46%(前日比+0.13%)、10年債が2.38%(同+0.08%)となり、長短金利差が-0.08%という明確な逆ザヤ現象が生じたのだ。 ●逆イールドが発生したからと言って、今の日本の株式市場にマイナスとはならない 2年債と10年債の利回り逆転は、過去においても実際の景気後退の1~2年前に発生しており、市場参加者の関心が高い指標だ。2000年代初頭のITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にも出現していた。直近では米中貿易摩擦が激化した2019年に一時発生し、その後の新型コロナ感染拡大で世界経済が大幅なマイナス成長に陥った。 逆イールド現象は確かに景気後退のサインであるが、これが直ちに今現在の株式市場にとってマイナスか、と言えばそういうことにはならない。米国において1960年代半ば以降、2年債と10年債の逆イールドは8回出現した。最初に逆イールドが発生した後、S&P500指数が天井を打つまで平均で18ヶ月間の時間がかかっており、その間のパフォーマンスは+19%となっている。 ●FRBが現在重視しているのは短期の金利差 ところで、FRBは現在の米景気や雇用環境の強さを強調しており、2年債と10年債の利回り逆転ではなく、より短い年限における債券の動きを注視している。そのきっかけは2018年だ。トランプ政権時代、米中貿易摩擦を背景に2年債と10年債の金利差が急激に縮小し、逆イールド騒ぎが起こったときだ。 この時FRBは「長期金利を物差しにした金利差は景気予測の指標に適さない」と述べ、「短期の金利差が重要だ」と主張した。具体的には「18カ月先の3カ月物先物金利」と「3カ月物国債利回り」の差だ。パウエル氏はこの2つの金利水準について「もし逆転すれば、それは景気が弱いことを示唆しており、FRBが利下げに向かうことを意味する」との見解を表明した経緯がある。 それでは今、この短期金利差はどうなっているのだろうか? 実は足元で2%超に広がっており、2年債と10年債の逆イールドとは対照的である。3月の雇用統計は好調、失業率は3.米国逆イールド環境下の投資戦略 6%とコロナショック前の2020年2月の3.5%だった完全雇用に迫っている。「景気後退のリスクは小さい」とするFRBにとって一般論的な逆イールドが発生しても、それは正しい警告にはならないことを示す格好の材料といえる。 ●2023年の春~秋頃まで上昇相場が続いた後、「逆金融相場」に突入する可能性が高い ここまで書いたが、皆さんの関心は「この先の日本のマーケットはどうなるのか? 」だと思う。もちろん、FRB流に言えば「短期的には気にするな」であるが、これまでの経験則を当てはめると、昨年春から始まった業績相場がテーパリングというガタガタする局面を経て、ようやくマイルドな局面に戻りつつあるが、上昇相場が続くのは2023年の春~秋頃までということになる。 その頃には米国の政策金利は3%前後まで上昇し、金利のピーク局面手前でクラッシュが始まる「逆金融相場」に突入する可能性がある。そこからは景気減速を伴って「逆業績相場」がやって来る。要するに2023年の半ば前後から「逆金融相場」が始まり、2024年初頭には「逆業績相場」が来る、という見立てを私はしている。そして経済立て直しのために再び金融緩和に転じて、2025年頃から「金融相場」に戻る。 このシナリオはかなり大雑把なものであるが、マーケットは常に変化してゆく。その変化にきちんと対応した投資行動が取れるかどうかが個人投資家にとって重要だ。なので、個人投資家の皆さんにおいてもある程度、自分の見通しを持っていた方がいいと思う。 今後、都度、マーケットサイクルについては言及していきたい。 ●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

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